公益財団法人 とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2016年09月 アペカカカ!(最終回)

十田麻衣(とだまい)

時間通りに来る電車やバス、あるかないか聞かなくても安心して料理をオーダーできるレストラン、とてつもなく綺麗なトイレ…2年ぶりの日本に慣れたような慣れていないような…帰国して2か月ほどが経過しました。そんなコラム最終回では、日本に戻ってから驚いたこと、改めて考え直したことをお伝えします。
 7月末に神奈川県の相模原市にて日本中に動揺を与える事件が起きたことは、みなさんの記憶にも残っていらっしゃると思います。この事件に関する議論はここでは避けますが、これを通して『安全』や『治安がいい』という概念について振り返りました。この事件は、わたしが帰国してから最も衝撃を受けた出来事のひとつです。
 ガーナの首都では、外国人や富裕層のガーナ人を狙った窃盗事件が起きることもたまにあります。しかし、2年間ガーナで暮らしていて殺人事件が起きたという話は一度も耳にすることはありませんでした。それに比べ、帰国後2か月間で日本で起きた無差別殺人事件は数件あったと記憶しています。いったい何をもってして「日本は『安全』な国」、「日本は『治安』がいい国」と言えるのでしょうか?ガーナをはじめとする特にアフリカ地域の途上国では、実は強盗や殺人などよりも、交通事故と病気のリスクのほうが遥かに高いのです。交通事故は“運”としか言いようのない側面が強いように感じますが、病気は予防することが可能です。薬を服用したり、身体の状態を気にかけたりすれば病気にかかることは防げます。では、無差別に殺されてしまうような事態は、どう回避すればいいのでしょう?日本でも、ガーナでも暮らした経験をもつわたしにとっては、無差別殺人が起きてしまう現状のほうが『安全でない』と感じてしまいます…。
 日本に訪れたことがない人から「地震や津波が頻繁に起きる国で日本人はどうして生活しているの?」と疑問を投げられることも稀ではありません。中には「原爆の影響で木も草も生えていないんだろう?」と思い込んでいる人も…。今はインターネットで行ったことも、見たこともない国や地域の情報を手に入れることが出来てしまいます。自分の目で見て、肌で感じた事実以外の、パソコンやスマートフォンを通じて得た情報だけを鵜呑みにしていることってありませんか?どんな、誰の、情報を信じるか。そしてその情報を基に、その事象をどのように捉えるか。すべては各人の判断に委ねられています。様々な人と関わり、話を聞き、どこかへ出かけていろんな体験をして…そんなことで自分が信じられる情報はどんどん精査されていくのでは、と考えています。そのため、これからもできる限りいろいろな国や地域に足を運び、体験して、あらゆる人と関われるようにしたいなと、日本に帰ってきてより強く考えるようになりました。
 2年にわたりコラムを読んでいただき、ありがとうございました!またどこかの国から、その国や地域のリアルタイムな情報をお届けできたら嬉しいです!心の底から…あっぺかかか?

十田麻衣(とだまい)

元協会職員の十田麻衣さんが、青年海外協力隊として2014年7月より西アフリカの国、ガーナで活動して、この度帰国しました。十田さんからの驚き、発見、感動たっぷりの便りの最終回をどうぞ。