公益財団法人 とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第6回 多言語相談サービスの特徴01

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 在住外国人が増えているなか、多言語のスタッフをそろえ、通訳対応している自治体などは、かなり多くなりました。また、外国人相談サービスを定期的に行ったり、在留資格などの専門相談をしているところもたくさんあります。
 しかし協会の相談は、他ではあまりみられないいくつかの特徴を備えています。
 一つは、「相談」と「コミュニティ」という二つの異なる場を用意し、多言語スタッフがどちらにも関わっているということです。多言語スタッフはそれぞれの国出身の人で、スタッフは、センターに来た人と母語で話をし、食事をしたり、勉強したりします。地域に住む外国人が、自分の言葉で話し、仲間と出会い、つながり、情報を得たり、相談できるようなコミュニティの場と機能を、スタッフはつくっています。外国人のコミュニティは小さいので、ウワサで傷ついたり、人間関係が難しくなるという問題がよく起こりますが、スタッフはコミュニティが機能するよう気を配っています。
 しかしそのコミュニティでは話したくないことも起こります。近所の人に何でも相談できない、したくないという気持ちと同じです。そういうときは、スタッフがさりげなく個室に誘い、じっくり話を聞きます。もちろん秘密は守られます。
 一方、普段センターを利用したことがない外国人が相談に来ることも多くあります。その場合もまずは個室で話を聞きます。その人がプライバシーを守りたい気持ちや、辛くて人と関われない様子の場合は、相談だけ対応します。でもその人が地域やコミュニティとのつながりがあるほうがよい場合は、日本語学習の場を紹介したり、スタッフが同じ国の人のコミュニティに連れて行って、皆で一緒に話し、「いつでもおいで!」と誘います。プライバシーを守れる場の相談と、人とつながれる場のコミュニティの二つを用意し、それを多言語スタッフがつなげているのは大きな特徴です。
 出身国・地域によって、人によって、「(個別に)相談する」という行動文化がなかったり、逆にプライバシーを強く求めることもあります。「相談」と「コミュニティ」の二つの場を柔軟に使うことで、潜在的なニーズをつかみ、対応していくことができます。それはまた、相談者が安心して利用できるということでもあります。センターというハード(建物)と、スタッフというソフト(人)の二つがあって、それが機能しているのです。特徴の一つ目だけでスペースがなくなってしまいました。続きはまた次月で!

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。