公益財団法人とよなか国際交流協会

なんぢゃ・カンヂャ・言わせてもらえば

第20回 目ぢからのある女性たち

皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)

 友人の、もりきかずみさんから、「アート&クラフト展」の案内が届いたので、九月末の残暑厳しい、神戸の北野坂に出かけました。もりきさんと言えば、「国際結婚ハンドブック」で有名ですが、実は、アメリカやブラジルの美術学校でモダンアートを学んだ経歴の持ち主だったことをはじめて知りました。案内冊子の略歴によると、一九八〇年から創作活動と個展をされています。九四年から開始された、フィリピン人女性の仕事作り支援は、九五年の阪神淡路大震災後、在日アジア人女性の生活相談へと活動が広がります。活動の拠点となった鷹取カトリック教会には、アジアの在日女性たちが集まりはじめ、NGO「アジア女性自立プロジェクト」として現在も、仕事作り支援が続けられています。
今回は、キャンパス地にアクリル絵具で描かれた、現代アートを日常的に楽しみながら使える作品でした。夕陽を連想させる素敵な色合いと、力強いタッチに、もりきさんの人柄がにじみ出ているなと、思いながら、バッグやポシェットを見てまわりました。縫製はもちろん、フィリピンの女性たちとのコラボレーションです。展覧会、最終日だったので、フィリピンやベトナムの女性たちが、手作りの自慢料理を届けてくれました。美味しい料理に夢中になっていると、隣にいる女性はみたことがある人です。あれれ?と久々の再会に喜ぶというシーンを何度も繰り返し、カッコイイ先輩、同輩女性たちの近況を知ることができました。もりきさんをはじめ、会場で出会えた皆さんは、死ぬまで自分ができる活動を続けるんだろうなと、羨ましくなりました。
 以前に、もりきさんたちの活動を知るため、日本人夫からの暴力から逃れ、幼い子どもさんを連れて、助けを求めてきたフィリピン女性の話を聞く機会に恵まれました。もりきさんは支援をする中で、何もないところから自分の人生を切り拓く、彼女の力強さや、権利意識の高さに驚かされたと言っていました。
 支援を求める女性たちにとって、支援する側はどんな人間として映っているのでしょうか。自分より、高学歴で、生活が安定していて、上から目線で世話をしたがる人、なんていうこともあるのではないでしょうか。支援できることは限られていて、できないことのほうが多いかもしれません。しかし、その中でこつこつ活動していくと、時には、その限界を打ち破ることができる瞬間があります。また、支援しているつもりが、実はされているのでは、と気づくこともありますね。
 子どもの頃、「人間はどうせ死んでしまうのに、なんで生まれてくるのか。」と疑問に思い、不安になることがよくありました。私の場合、「在日」として生まれた不安も、上乗せされました。そんな私が、誰かの役に立ち、必要とされていると感じるとき、生まれてきてよかったなと素直に喜ぶことができます。
 まだまだ、やりたいこと、やらなくてはいけないことが多くあります。展覧会で手に入れた、大きなバッグを見ながら、目ぢからのある、女性たちを思い出して、これからの活動を考えています。

皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)

1957年大阪生まれ兵庫育ちの在日朝鮮人(朝鮮人は民族の総称)。
在日女性の集まり「ミリネ」(朝鮮人従軍慰安婦問題を考える会)代表。
「家族写真をめぐる私たちの歴史-在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性」責任編集。2016年、御茶の水書房刊。
小学校講師。
家族写真を使って、個人のルーツや歴史を知り合うワークを開催している。