第100回 本気のユンノリ大会
皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)
民族団体主催の「ユンノリ大会」に豊能地域の代表として、池田の民族子ども会「ケグリ(かえる)の会」が初参加しました。急な呼びかけだったのですが、子どもと保護者たち4人がチームとなり、ユンノリに挑戦です。ユンノリとは韓国、朝鮮のすごろくです。さいころの代わりに「ユッ」という四本の木を放り上げ、進める数が決まります。駒が到着地点を通過したらゴールになります。大量得点で優位に進んでいても、相手に追いつかれ振り出しに戻されたり、なかなか進まなくても仲間の力で一気に上がったりとスタートからゴールまでの攻防戦が見ものです。
三回目になる大会会場は、小学生から大人まで200人を超える人たちでいっぱいです。私たちの最初の対戦相手は同じく初出場のチームでした。子どもたちが絶好調で、開始後10分で全員がゴールしました。初勝利です。二回戦は、「勝つぞ」というオーラが出ている熟年女性たちのチームでした。高得点だったのですが、気迫に圧倒されました。差し入れのジュースを飲み、三回戦は気持ちを立て直して挑んだのですが、高齢の対戦メンバーはユッの投げ方がうまく、魔法のように駒をすすめます。その技術の高さに子どもたちも唖然。どのように駒を進めるのか考える参謀もいて、接戦でしたが、負けてしまいました。子どもが混ざっている一般チームは池田だけだったのですが、大声で喜んだり、落胆したりと本気の大人たちを目の前にして、子どもたちも真剣です。
予選が終わり、キムパップ(海苔巻き)やチャプチェ、チヂミ、キムチが入ったお弁当をいただき、美味しかったです。決勝戦がはじまる前に、いつも遊んでいる、チェギチャギや投壺をしていると、初めて会った子どもたちと仲良くなりました。池田では少数でも、こんなにたくさんの同胞の子どもたちがいることが、なんだかうれしいです。民族学校の子どもの中に、アフリカ系の顔立ちの子どもたちをみつけました。多様な仲間がここにいることが、ますますうれしくなりました。
帰りの電車の中で、韓国から20数年前に日本にきた保護者が、対戦相手の大人たちが、容赦はないけれど本音を見せる姿に、同胞は気を遣わなくてもよいからほっとすると話されていました。日本の人たちは相手を思いやることが当たり前で、よい時もあるのだが、本音はどうなのかわからなくなることがあるそうです。日本で生まれ育った私は韓国に行くと、自分がいかに「日本人みたい」であるかを自覚させられます。
韓国の田舎の夜は長く、みんなでユンノリをしたことがあります。まだ、韓国語も十分に理解できず、ルールも知らない私にいとこたちが一生懸命教えてくれました。その時の祖母たちも本気でした。時間を忘れて親戚たちが遊ぶ場に、自分が参加していることが不思議でした。日本にいる親戚が少なかったので、韓国の親戚パワーがとても頼もしかったです。
年一回の民族まつり、池田「オリニモイム」は来年の一月に開催されます。その時にぜひ、ユンノリ大会を企画したいと思います。池田市内の各学校園からチームを募り、民族講師がユンノリのやり方、試合のマナー、韓国の文化などを事前に教えて回ると広がりますね。ユンノリという伝統遊びを通じて、いろいろな人たちと繋がれることが素晴らしいです。
戦争中のすごろくで、「大東亜共栄圏双六」というのがありました。朝鮮、中国、東南アジアと侵略していく子どもむけのすごろくです。こんな遊びが復活しないように、隣の国、友だちの国への理解を深めてほしいです。これから、子どもも、大人もユンノリの練習で盛り上がりたいと思います。
皇甫康子(ふぁんぼ・かんぢゃ)
1957年大阪生まれ兵庫育ちの在日朝鮮人(朝鮮人は民族の総称)。
在日女性の集まり「ミリネ」(朝鮮人従軍慰安婦問題を考える会)代表。
「家族写真をめぐる私たちの歴史-在日朝鮮人、被差別部落、アイヌ、沖縄、外国人女性」責任編集。2016年、御茶の水書房刊。
小学校講師。
家族写真を使って、個人のルーツや歴史を知り合うワークを開催している。