第50回 こどもだけの夜~低所得+単親+外国人親
吉嶋かおり(よしじま かおり)
日本人夫のDVから逃れて、幼児二人と生活を始めたAさんは、昼は工場で働き、それだけでは十分な収入がないので、夜も仕事に出ていました。子どもたちは、昼は保育所に行けましたが、夜は家に子どもだけ。近所に住んでいたシングルマザーのお姉さんの長女が子どもたちと一緒に夜を過ごしてくれていました(お姉さんも夜も仕事でした)。とはいえ、その長女もまだ小学校高学年。お母さんたちが忙しく働いているので、大変な状況でみんなで協力していましたが、子どもたちだけで夜を過ごすのは、お母さんも心配でいっぱいだったと思います。
別のシングルマザーのお母さんは、小学校に入ったばかりの子どもがいました。どうしても祝日が休めない仕事をしていました。保育所のときは、休日保育を利用できましたが、小学校になって、学童は休祝日はお休みです。民間学童を利用できるような収入もありません。お母さんは食事を置いておき、休み時間に電話して、子どもの様子を確認してましたが、心配な様子でした。子どもは一日中家でゲームをして過ごしているそうです。
また別のシングルマザーのお母さんも、低賃金の仕事をいくつも掛け持ちして、週7日働いていました。子どもにはちゃんと教育を受けさせたい一心で、一生懸命働いていました。でも子どもは夜や週末は家で一人で過ごし、やはりゲームばかりしていたそうです。
こういう状況の外国人親の家庭は、相談でよくあります。外国人の単親家庭は、近くに親きょうだいや親戚がいないことが多いので、助けを頼める人もいません。夜や休日に仕事にいかなければならない経済状況の中で、子どもたちは大人の見守りがない中で過ごしています。これは、子どもが安心・安全に過ごすための十分な保育や学童体制が不足しているという、社会的に取り組むべき問題です。あるいは逆に、養育期に、親がゆったりできる就労環境が整うような制度のほうが必要でもあります。
そのどちらもない現在、犠牲は子どもがかぶっています。でもこのような実態を、行政は把握しているのでしょうか?
(2019年4月号より)
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。