公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第54回 新型コロナウイルスと在住外国人

吉嶋かおり(よしじまかおり)

 世界中で蔓延する新型コロナウイルス。私たちの様々な日常や前提を変えましたが、在住外国人が受けた影響の一つ、移動の制限について今回は書いていきます。
 Aさんは、二人の子どものうちの一人と一緒に、数年前に来日しました。当時もう一人を連れてくることが、様々な事情で叶いませんでした。できるだけすぐにもう一人の子どもを呼び寄せたいと思ってきましたが、経済的に苦しく、また、頼りになる人がいない中で、幼児を育てることへの困難から、すぐに呼び寄せることができずに年月が経ちました。でも昨秋、ようやく目途がたち、呼び寄せの在留許可申請をしたのですが、低収入を理由に不許可となりました。ちなみに、この子どもは、日本国籍ではありませんが、父親は日本人なのです。新年度までに来日できるよう、Aさんはその後仕事を増やし、準備していました。ですがこのコロナウイルスの問題で、子どもの来日どころか、Aさんが一時帰国することもできなくなりました。子どもと離れて暮らさなければならない日々はさらに延びてしまい、いつ会うことができるのかもわからない状況になってしまいました。
 Bさんは、年に一度以上は、高齢の母親に会いに母国に行っていました。重い持病がある母親からウェブ通話でこんなことを言われたそうです。「コロナウイルスにかかってしまったら、私は死ぬだろう。急に連絡できなくなるかもしれないから、その前にちゃんと言っておきたい。私はあなたを愛しているよ。」そうでなくても高齢の母を一人でおいて、自分は遠い外国にいることを苦しく感じていたBさんは、お母さんと話した後、号泣したそうです。Bさんはお母さんに会いに帰国することはできます。ですが、現在は入国制限が行われているため、帰国したら、日本に再入国することができません。Bさんは日本で家族と暮らしているので、自分が戻ることは、すなわち、自分の今の家族と離れ離れになってしまうことになるのです。
 Cさんは、重い病気になりました。命に別状はなかったのですが、生活にはさまざまな問題が生じ、子どもの養育にも支障がでました。ですが、療養と生活サポートを受けるために帰国することは、症状的に、また母国側の事情からも不可能でした。コロナウイルスがなければ、親きょうだいなどに来てもらうことができたでしょうし、近くの友だちに助けてもらうこともできたのですが、どれもできない状況になってしまいました。Cさんの困難と不安は、とても大きいものでした。
 コロナウイルスによって起こった不自由と痛みの中で、攻撃的な出来事がニュースで取り上げられています。でも、痛みと不自由の中でこそ、他者への共感、ともにこの状況を生きる私たちのつながりを感じることがあってほしいと願います。今回このような相談例を取り上げたのも、災難を同じように生きている中での「つながり」を感じたい思いからでした。哀しみも苦しみも、それを知っていてくれる誰かがいることは、とても大きいのです。最後まで読んでくださってありがとうございました。
(以上は8月10日現在の状況に基づくものです。)

吉嶋かおり(よしじまかおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。