公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第58回 行政手続きにユニバーサルデザインを!

吉嶋かおり(よしじまかおり)

 子育て世帯への臨時特別給付金が支給されることになり、対象家庭に自治体から書類が届いていて、それとともに、相談が寄せられています。「この書類は何?」「どうすればいいの?」
 今回もまた、書類を見て正直うんざりする気持ちになりました。私はこういう書類を読む識字能力がありますが、それでもめんどくさいと感じますし、記入支援していて、本当に合っているかどうか100%自信が持てない気持ちにもなります。日本語が母語ではない外国人にとっては、解読しようという気持ちにもなれないのではないでしょうか。
 税金関係の法制度は、わざわざ複雑にし、納税者が理解できないことで税金を支払うように仕向けている…なんていう話がありますが、行政文書を見るたびに、そういう話は本当なのでは?!と思ってしまいます。保育所の入所書類なんて、恐ろしいほどの量と内容です。
 これ、何とかならないもんでしょうか。もっとわかりやすく、シンプルに。行政の文書に、ユニバーサルデザインを導入できないでしょうか。IKEAの取り扱い説明書は、文字をほぼゼロにしているからこそ、とてもわかりやすくなっています。こんなふうに、言葉での説明ではなく、デザインとしてできないものでしょうか。
 例えば納付書類。相談の定番テーマです。何かわからずため込んで相談に持ってきます。みんなちゃんとやりたいと思っているのです。でもわからなくて困っています。
 提案として、全国どの自治体でも行われている手続きは、フォーマットを同じにするのはどうでしょうか。税金や健康保険などの納付書は各書類ごとに色を決める。それぞれのピクトグラム(絵文字:非常出口マークが例です)を載せ、金額と支出額を明確に記載する。住民登録関係、保育所、学校の書類(奨学金など)、公営住宅なども、手続き自体はほとんど同じですから、共通部分をシンプルでわかりやすい共通フォーマット化する。こうすれば、在住外国人だけでなく日本人にもわかりやすくなりますし、転居先の自治体での手続きにおいても戸惑わなくてすみます。共通フォーマットになれば、各国語の翻訳も同一でできるので、全国の自治体が共有利用できます。
 提案を付け加えると、書類だけでなく、電子手続きとしてもこのユニバーサルデザインやナッジ理論(人々が強制的にではなく、よりよい選択を自発的に取れるようにする方法)などに基づいた、わかりやすく簡単で使いやすい方法を取り入れてもらえたらと思います。
 国が音頭を取らないのなら、例えば都道府県や広域圏単位で取り組んでみることはできないでしょうか。
 行政、デザイナー、広報のプロの力を期待しています!

(2022年2月号より)

吉嶋かおり(よしじまかおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。