第1回 はじめに
吉嶋かおり(よしじま かおり)
とよなか国際交流協会では、設立当初から外国人相談サービスを行っています。現在は、ほぼ週1日、8ヶ国語で、その言語がネイティブの多言語スタッフが対応しています。
相談って、何をしているのか、多くの方にはわかりにくいかもしれません。相談者は、自分の問題や悩みを知られたくないことが多いですし、もちろん、名前や国などの個人的なことがもれてしまうことも嫌だと考えますから、相談は秘密を守ることが最も大切になります。そのため、私たちの活動は、他からは何をやっているのかわかりにくくなるのは宿命かもしれません。
相談サービスでは、プライバシーに深く関わるようなこと以外にも、日常生活の様々な疑問や、情報提供にも応えています。例えば、「出し巻き卵を作りたいけれど、あのフライパンはどこで買えるのか?どうやって作るのか?」というようなことも、情報提供しながら、一緒に作る機会を持ったりしているのです。外国人相談サービスは“何でも屋”みたいなもんです。相談に来た外国人が求めることには、どういうことでも対応します。その柱となるものは、エンパワメントです。
今月から、外国人相談サービスにまつわるあれこれをお話していくことになりました。外国人がどのような問題を抱えているのか、日本社会でどのように困っているのか、そして私たちスタッフが、何を大切にしながら援助活動をしているのか、読者の皆さんに知っていただけたらと思います。さて、在住外国人は、どのようなことに困っていたり、悩んでいるでしょうか?それは、基本的には、世界中の人が持っている問題や悩みと同じと考えてよいでしょう。人々が生き、家族がいて、人と交わり、仕事をして暮らす中で生じる問題は、本質はそれほど違いはないものです。ですが、それをどのように悩むか、何を問題と考えるか、そして、問題や悩みにどのような態度を示すか、何が「解決」として納得がいくのかは、文化的な影響が見受けられます。そして在住外国人の場合は、さらに次の2つの特徴があります。1つは、外国人であるがゆえにより起こりやすい問題、そして、在留資格(ビザ)の問題です。
次月では、これらについて、より具体的にお話していきたいと思います。
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。