第7回 多言語相談サービスの特徴02
吉嶋かおり(よしじま かおり)
協会の相談サービスは、現在9カ国語で対応していますが、そのほとんどはそれぞれの国の出身の多言語スタッフです。そして日本人の私は、心理士という立場を踏まえてこの事業を担当しています。多言語スタッフと私は、役割分担をしつつ、協力してペアで相談にあたっています。母語・母文化をもった外国人スタッフと日本人の私の両方が対応するというのが、協会の相談サービスのもう一つの特徴です。
相談をきくのは、かなり専門的な能力が必要です。法・制度や精神保健など、さまざまな知識をもっているだけでなく、話を聴く技術や、相談者と適切な関係を維持する技術など、いろいろな能力が求められます。福祉、心理、教育などの援助の仕事については、日本ではそれぞれ国家資格、認定資格などがあります。しかし、在住外国人でこれらの資格を持ち、仕事をしている人は非常に少ないです。日本で援助活動をしようと思って来日する外国人は少ないでしょうし、たとえ福祉や心理を勉強しても、仕事で在留資格を得て働くことがほとんど不可能なのが現状です。
協会の多言語スタッフは、資格を持った援助の専門家ではありませんが、単なる通訳者でもありません。心理的援助の技術や日本の法・制度については、私が多言語スタッフにアドバイスをし、多言語スタッフは文化的背景や問題などを私にアドバイスします。相談者が抱える問題について、相談者自身が納得のいく理解や選択をし
ていくためには、相談者と多言語スタッフと私の三者が、その問題にまつわるさまざまなことを、相互に理解しあわなければなりません。このプロセスは、とても意味があるものなのです。というのも、相談者が自分の問題を解決していくプロセスには、自分自身や問題をある程度客観視することが重要です。相談者は、同じ国出身のスタッフの目と、日本人の私の目の、二つの視点を通して客観視でき、自分なりに理解していくことができるのです。
多言語スタッフと私とで対応することの利点は、相談者にとってだけでなく、相談者の周囲の人や、その他の援助機関にとっても有益に働きます。相談者が、福祉、司法、医療などを利用しなければならないときに、相談者が、普段あまり外国人を対象にしていない機関の援助者とスムーズにつながるよう、多言語スタッフと私がコーディネートし、クッションのような役割を担えます。相談者は多言語スタッフがいることで安心できますし、機関は私が対応することで安心できるようです。
外国人の援助専門職者がいなくても、地域在住の外国人(日本語能力が必要ですが)と日本人の専門職者とが協力して対応していくことは十分可能です。外国人住民がいても外国人の援助専門職者を見つけるのは非常に難しいと思われる地方でも、このような体制でやっていくことができます。でも将来は、多くの外国人援助者が活躍していってもらいたいと願っています。
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。