公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第9回 支援にまつわるいろいろ02

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 「外国人の相談の仕事をしています」と言うと、たいてい「英語で相談してるんですか?」と言われます。外国人=英語と思われるのでしょうか?それとも、英語=世界共通語という意識が浸透しているのでしょうか?
 外国人相談サービスでは、現在9ヶ国語で対応しています。これは、豊中市在住外国人の言語上位順です。英語での相談は年間ほんの数件です。
 相談サービス事業では対応していない言語を母語としている人も、もちろんたくさんいて、年間いくつか相談があります。その方たちに対しては、私が日本語で対応しています。ほとんどは、ある程度日本語はできても、十分ではなく、読み書きは困難という方々です。困った状況の中、日本語で相談しなければならないというのは、とても大変なことだろうと想像します。
 相談を聞いているときに私が気をつけているのは、しっかりと聴くことと、できるだけわかりやすく話すことです。わかりやすく話すというのは、子ども言葉を使うことではありません。一文は短くする、主語と述語をはっきりと言う、熟語や慣用句を使わない、まわりくどい言い方をしないなどです。例えば、「こちらにご記入ください」は、丁寧ですがとても難しく聞こえます。でも「ここに書いてください」は、丁寧でありながらわかりやすい言い方です。電話で名前を聞くとき、「お名前をいただけますか?」はわかりませんが、「あなたの名前は何ですか?」は、たいてい答えられます。ちょっとした意識で、コミュニケーションができるようになります。
私が話すときは、相談者が理解しているかどうか、表情などから様子を伺います。理解していないときは、たいていわかります。黙ってしまったり、不安な表情を見せたり、会話がちぐはぐになったりします。
 言いたいことを十分言えて、相手に理解してもらえたと思えると、相談者は安心できます。そうなるように気をつけることが「しっかり聴く」ということです。相談者は日本語に100%の自信を持っていませんから、「伝わっているだろうか」と心配します。相談者が言ったことを繰り返したり、「それは○○ということですね」というように確認する言葉を返すと、安心することが多いように思います。
 こんなふうにして、相談者も私も、お互いに理解し合おうと試行錯誤しながらの相談になります。そのプロセス自体に、信頼関係をつくり、問題の解決や納得のいく選択などにつながる意味があると考えています。
 こういうことは、皆さんも日常生活や仕事のなかでできます。日本語が流ちょうでない外国人に接するとき、あなたが話す日本語を少し工夫してみてください。また、外国人の言葉をゆっくり、しっかり聴いてみてください。心配するよりもずっとコミュニケーションができますよ!

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。