公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第13回 国際結婚:再婚にともなう問題01

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 国際結婚が増えている中には、再婚のケースもたくさんあります。その中には、子連れ再婚もあります。子連れ再婚は、どの家族でもいろいろな大変さがありますが、国際結婚の場合は、その特徴的な問題が見られます。
 Aくんは、お母さんが日本人男性と結婚したので、一緒に暮らすために日本に来ました。日本に来た時、彼はティーンエイジャー、日本での義務教育は終わっている年齢でした。新しいお父さんは自営をしていて、彼を学校に行かせることはせず、仕事を手伝わせました。Aくんは日本語を勉強する機会も、同年代の友だちをつくる機会もありませんでした。ときどきセンターに来て、自分の国や友だちの話、最近の出来事や、お父さんやお母さんのことを、ぽつぽつ話しました。私は彼の言葉を理解していないので、会話は日本語でした。日本に来て、お母さんと一緒に暮らせているのはとてもうれしそうでしたが、厳しいお父さんとの関係や、望まない仕事をしていること、将来を自分で描けないことは、複雑な思いを持っているようでした。お父さんはかなり厳しかった様子で、そのお父さんに対して、お母さんは何も言えないでいたそうです。そしてそのことを、彼は十分すぎるほどに理解していたようです。彼は本当は、もっともっ

とたくさん話をしたかっただろうと思います。
 ある日、「もうセンターに来られない」と言いました。お父さんが、新しい仕事を遠くの地で始めることになり、Aくんはその仕事を手伝いに行かなければならなくなったのでした。Aくんは、「本当は行きたくない」と言っていました。知らない土地ですし、やりたい仕事というわけではありませんでしたし、そして何より、お母さんと離れてしまうからです。でも、彼に他の選択肢はありませんでした。もし日本人の子どものように、日本語ができていたら、日本の学校を卒業していたら、他に頼れる身内や友だちがいたら、彼の人生は違っていただろうと思います。
 彼はしばらくの間、かなり落ち込んでいるようでした。でもしばらくして、彼は「新しいことをがんばる」と笑顔で言いました。それ以来、私は彼と会っていません。
 彼のことを思い出すとき、私の中でさまざまな思いが巡ります。とても複雑な感情です。
 再婚によって、子どもは、良い面でもつらい面でも、多かれ少なかれ翻弄されます。それは、各家庭によってさまざまに違っています。国際再婚の子どもについて、次号でも触れていきたいと思います。

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。