第14回 国際結婚:再婚にともなう問題02
吉嶋かおり(よしじま かおり)
前回の国際再婚の話では、外国人のお母さんとその連れ子の、新しい家族関係や生活について書きました。このように、外国人のお母さんが再婚して、子どもを母国から呼び寄せる家族だけでなく、呼び寄せられずに苦しむ母子も、私は数多く見てきました。
Aさんは、結婚するときに、連れ子も日本で一緒に住みたいと思っていて、日本人の夫にもそれは話していました。夫は了承し、Aさんがまず日本に来て、二人の生活が始まってから、母国の子どもを呼び寄せようとしましたが、子どもは在留資格をとれませんでした。外国人の母の連れ子は、「定住者」という在留資格で日本で生活できますが、これにはいろいろな条件があり、Aさんの子どもはこれに該当しませんでした。Aさんも夫も、在留資格の問題で家族一緒に暮らせないとは思いもしませんでした。子どもは日本に短期的に来ることはできますが、お母さんと一緒に、家族として生活することはもう二度とできなくなってしまったのです。Aさんの悲しみは、それは大きなものでした。結婚を機に、Aさんと子どもの人生は大きく揺さぶられたことになりました。
Aさんの夫のように、結婚のときに子どもと暮らすことを了承し、在留資格の手続きも積極的に手伝う人がいる一方で、そうではない人もいます。Bさんは、連れ子と一緒に住むことも“条件”に再婚を決めましたが、夫は全く手伝おうとしませんでした。呼び寄せには夫の協力は不可欠です。Bさんは何度も夫に話をしましたが、夫は取り合おうとしないまま、何年も過ぎてしまいました。Bさんはその何年もの間、子どもへの罪悪感、何もできない自責感、時が過ぎていく焦燥感でいっぱいでした。Bさんと子どももまた、結婚を機に人生が大きく揺さぶられてしまったのです。
Cさんは再婚のとき、日本人の夫に連れ子がいることを隠していました。というのも、子どもは夫が引き取っていて、そこで生活していたからです。しかしCさんが結婚して数年後、Cさんの前夫が再婚することになり、子どもはCさんの両親の元に戻されてしまいました。そこでCさんは初めて夫に、前婚で子どもがいること、その子どもを呼び寄せたいことを話しました。夫にとっては、青天のへきれきだったことでしょう。ずいぶん悩んだと思いますが、子どもを呼び寄せるという結論を二人は出しました。しかし、Cさんの母国の法律の関係で、子どもは日本に呼び寄せることができませんでした。家族として暮らそうという二人と子どもの思いは宙に浮いたまま、この家族はその思いをまた収めていかなければならなくなりました。
再婚によって子どもと決定的に離ればなれになってしまうことになった家族。そこにはいろいろな背景がありますが、どれも心が痛みます。
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。