公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第16回 日本での子育て02

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 しばらくお休みしていましたが、今月から再開することになりました。よろしくお願いします。前回(6月)は、子育てのお話でした。今回もそのつながりではじめたいと思います。
 先日、豊中市の保健師さんがセンターに来られました。保健師さんの担当地区に外国人のお母さんがいました。赤ちゃんが生まれると、自治体から保健師、助産師、地域支援保育士、主任児童委員等が全ての家庭を訪問し、悩みや不安を聞いたり、赤ちゃんやお母さんの心身の状況をみて、必要に応じた支援につなげます(「こんにちは赤ちゃん事業」)。保健師さんもそのお母さんのお宅を訪問しましたが、お話をするうちに不可解なことが出てきたそうです。お母さんの国の出産・子育て事情などを知った上で、適切に対応したいと思われた保健師さんが、多言語相談サービスのスタッフにお話を聞きに来られたのでした。
 対応したのは、そのお母さんと同じ国のスタッフ。保健師さんは、そのお母さんの行動で不思議に思っていたことがあったのですが、それは、家族関係のとらえかたや、赤ちゃんの出生や子育てについての文化的な違いでした。スタッフはそのことについて、そのお母さんの国ではごく普通なのだということを説明しました。保健師さんが不可解に思ったもう一つのことは、日本語と外国語の表現の違いがもたらすコミュニケーション・ギャップからきていました。その国ではごく一般的な表現だったのですが、お母さんはそれを直訳して日本語で話したために、保健師さんは誤解して受け止めてしまったようです。スタッフがそのことを説明すると、保健師さんはとても納得されたようでした。
 外国で子どもを産んで育てるというのは、とても大変なことです。出産や子育てに関する言葉は、実は日常で使う言葉ではないので、多くの外国人は言葉の問題で苦労します。また文化の違いもとても大きく、とまどったり、不安に思ったり、孤立感を抱いたりします。そのため、「こんにちは赤ちゃん事業」は、そのようなお母さんが安心できる大きなきっかけになります。
 ですが、保健師さんが訪問してきて、「何を言っているかわからないけれど、とりあえず『はい、はい』とうなずいてしまった」、という外国人のお母さんの声をよく聞きます。訪問の時に、同じ国出身の人が一緒に行くことができれば、お母さんは安心できて、十分不安を取り除くことができるでしょう。それができなくても、この保健師さんのように、言葉と文化の違いに配慮しながら対応することもできると思います。相談サービスでは、多言語スタッフがそのためのお手伝いもしています。

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。