公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第17回 関係機関との連携01

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 A国出身のスタッフが、ある小学校に行った仕事の後で、先生が一人の子どものことについて相談をしました。Dくんは、お母さんがスタッフと同じA国出身で、お父さんは日本人ですが、DくんがA国のことを良く思っておらず、お母さんを馬鹿にする態度が見られることが先生は気になっていました。Dくんは、自分がA国にルーツがあることもオープンにしていなかったそうです。
 先生とスタッフは話し合い、Dくんのクラスで、A国とその文化を紹介する授業をすることにしました。とよなか国際交流協会では、学校への講師派遣事業も行っています。スタッフは授業で、「A国に行ったことがある人!」と声をかけました。すると、Dくんは勢いよく手を挙げました。それには先生もびっくりしました。Dくんは授業でA国の経験をたくさん話しました。授業の写真のDくんは、大きな笑顔でした。
 Lさんは、家族でB国からやってきました。自分も妻もなかなか仕事がみつからず、生活費に困った状況が続いていましたが、ようやくLさんは仕事につくことができました。しかし妻は仕事が見つからず、生活をやっていくにはぎりぎりの状況でした。それで、妻と子どもはB国に戻り、Lさんは日本に住み、また落ち着いたら、家族で日本で暮らそうと考えました。また、子どもは学校を休みにして、戻ったときに、また同じ学年に戻ったらいいだろうと考えました。
 しかし、日本とB国は学校の制度が違うので、子どもは学校を「休み」にすることはできませんでした。先生はそれを両親に説明したのですが、Lさんは十分理解できなかったようです。Lさんは手続きの用紙をもらったのですが、内容がわかりませんでした。とよなか国際交流協会に相談したとき、それが退学手続きだったので、Lさんはとても驚きました。学校側も、突然Lさんの子どもが辞めてしまうことに驚き、残念に思っていました。家族が離ればなれになることを心配し、また、せめて学年が終わるときまで通学を続けたら良いのにと考えていました。相談スタッフはLさんの状況や考えを聞き取り、また学校と連絡を取り合い、双方の誤解を解きました。
 学校に通っている子どもに関する問題については、学校との連携がとても大切なことが多くあります。とよなか国際交流協会では、学校とも協力・連携して、さまざまな事業を行っています。相談サービス事業としても、このように、スタッフがさまざまな形で関わり、子どもたちが健やかに過ごせるよう取り組んでいます。

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。