第40回 外国人の保証人問題
吉嶋かおり(よしじま かおり)
保証人問題。それは、外国人にとって、日本人よりもずっと大きな壁として立ちはだかっています。日本人でも、保証人は頼みやすいものではないですが、親族を頼るという選択肢がある人がほとんどでしょう(もちろん、そういう状況にない人もいますが)。
外国人の場合、保証人に日本国籍の人を求められることが非常に多くあります。ですが外国人の場合は、親族ももちろん外国人ですから、頼めるのは日本人の知り合いしかいません。親切な日本人の友人がいればラッキーですが、そう簡単ではありません。
例えばよくあるのは住居の賃貸契約です。保証人に日本国籍の人を求められ、でもそういうあてがなく、あきらめて保証協会を利用せざるをえなくなっています。こういう状況の人はたいてい経済的に苦しいので、保証協会への出費で、さらに困窮してしまうという悪循環が生じます。
保証人問題にぶちあたった、別の相談をご紹介しましょう。
母子家庭の母であるAさんは、子どもが無事高校に合格しました。しかし、入学に当たって必要な諸々の経費を支払う余力が全くありませんでした。収入は低く、毎月流れていってしまうカツカツの生活でした。そこで、母子寡婦福祉資金という制度で修学資金を貸りようと考えました。これは、いろいろな種類の貸付を受けられる制度で、基本的には無利子です。しかしAさんが外国人であったため、日本国籍の保証人を求められました。Aさんは保証人のあてがなく、その制度を利用することはあきらめざるをえませんでした。
結局Aさんは、生活保護を申請し、保護費から高校入学諸費用を支給してもらうことになりました。自分で働いて生活することを必死で頑張ってきたAさん。高校入学という一時的な出費だけができなかったのでしたが、そのAさんを支える制度がありませんでした。
この制度の利用では、日本語が十分でない外国人には到底無理な手続きだったという壁もありました。面接や記入事項、提出資料が非常に大きな負担になるものでした。外国人だけでなく、経済的に困窮している単親家族にとっては、このような手続きを目前にしただけで、手を出せない気持ちになってしまうのではないでしょうか。
保証人が必要なものはお金に関わることですから、しっかりとした手続きを踏まえる必要はあると思います。しかし、経済的困窮者が、さらに困窮してしまうようでしかないものだとしたら、せっかくの制度は活きないでしょう。経済的に苦しい人々は、そうでなくてもたくさんの制限、壁、狭い選択肢の中に置かれています。
「保証人」という制度(文化、と言えるかもしれません)によって生じる困難をどのように保障していくことができるか。これは社会制度上の問題です。
また一方で、そのような困難に直面している人が、どうやって問題を解決していくことができるか。これは、利用者と制度をつなげる、支援者・関係者の働きの問題になります。
低所得者層の増加は社会全体の問題ですから、さまざまな側面から見て、取り組んでいく必要があります。保証人問題もその一つであると、相談ケースから感じています。
(2015年8月号より)
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。