第42回 ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレンの日本国籍取得手続き01
吉嶋かおり(よしじま かおり)
ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン(JFC:多くはフィリピン人女性と日本人男性の間に生まれた子ども)の日本国籍を取る手続きの相談が急増しました。1980年代以降、多くのフィリピン人女性が「エンターテイナー」として日本に出稼ぎに来て、日本人男性と出会い、子どもをもうけました。日本人男性がフィリピンで女性と出会い、子どもができたという場合もあります。結婚したカップルもいれば、婚姻はせずに子どもをもうけたカップルもいました。しかし数万人以上のフィリピン人女性と子どもが、日本人の父親といつの間にか連絡が途絶えて現在に至っています。
JFCには日本国籍を取っていない子どもが多くいます。父母が婚姻をせずに生まれ、認知がない子ども、子どもの出生後に父母が婚姻したものの、父親が認知をしていない子ども、婚姻したものの、日本に出生届を出していない子どもです。
認知があれば、子ども自身がどちらの国に住んでいても、日本国籍の取得手続きをすることができます。しかし子どもが20歳までという期限があります。この期限はJFCにとって大きな壁です。そもそも認知がない子どもが多いので、行方不明の父親を探し、認知を認めさせ、その上で国籍取得手続きをします。父親から遺棄されている母子にとって、自分たちで進めるのはほとんど不可能です。そもそも「20歳まで」という期限があることを知りません。そうして年月が経ってしまい、紆余曲折を経て支援につながったときには、すでに子どもが成人していたということがあります。このような状況におかれているというのになぜ20歳という期限が必要なのでしょうか。(※)
一方、婚姻後にフィリピンで子どもが生まれたものの、父親が出生届を日本側に出していないという子どもも多くいます。この場合は、子どもは日本に来日し、おおむね半年程度住んだ後でなければ国籍取得手続きを進めることができません。これは、出生届を出さなかったということが日本国籍を放棄したと見なされるという国籍法によるものです。ちなみに「半年」について法的根拠はなく、中長期の在留資格を持っていても、法務局は手続きを受け付けません。この国籍再取得という手続きには、上記に加え、やはり20歳までという期限があります。さらに、子どもが15歳未満であれば、父母両方が手続きをしなければなりません。夫が勝手に離婚届を出している人もいれば、婚姻状態だが夫と全く連絡が取れなかったり、離婚の求めに応じてくれないという人が多くいます。このような夫を相手に、まず、子どもの親権者を決める法的手続きを進めなければ、母親一人で国籍再取得手続きをすることができません。ですので、子どもが15歳になるまで待つという選択肢を取る人もいます。
具体的にどのように対応しているか、どのような壁や問題に当たったかについては、また次回に続きたいと思います。
※日本は二重国籍を認めていません。未成年であれば出生地や父母の国籍によって日本と他の国籍を持つことは可能ですが、22歳までに一つに選択しなければなりません。20歳という期限はこの規定が背景にあるのでしょう。以前は、認知なく出生した子どもは日本国籍を取ることができませんでした。この対象は母親が外国人である国際婚外子です。これは差別であるとして、2009年国籍法が改正され、出生後認知でも国籍取得が可能となりました。しかしこのように、国際婚外子にとっては、結局は高い壁が残されたままと言えます。
(2016年3月号より)
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。