第48回 情報社会の発展と相談
吉嶋かおり(よしじま かおり)
インターネットやSNSが浸透し、利用者は世界中に広がっていますが、移住者の利用率もやはり高いと思います。スマートフォンがあれば、母国にいる家族や知人と、いつでも気軽に顔を見て話ができるようになったため、欠かせない物になっているでしょう。メールやSNSの発展は、相談にも変化をもたらしています。私が専門とする心理臨床においても、メールやチャットによる相談が特に若い人々の間で利用され、その手法や効果が検証されるようになってきました。私自身、講座やスーパービジョンを、グループビデオを通して受けていて、遠くにいる講師や仲間と、自宅にいながら学び合える便利さを享受できています。
当協会の相談でも、最近はメールやSNSでのやりとりが増えてきました。メールやSNSだけでアクセスしてきた相談者に具体的な対応は難しいのですが、面談を踏まえて、事務的なやりとりについては、相談者とメールやSNSで連絡をとることがあります。経済状況が厳しい相談者にとっては、センターまで来館する交通費の負担が大きい人が少なくないので、できるだけ負担がないよう、配慮したいと思っています。また、相談日(金曜日)に仕事で来ることができない相談者も多くいて、仕事を休むことはそのまま給与が減る場合もあるので、彼女・彼らの生活が維持できるかたちで相談に対応できればと考えています。
スマートフォンのおかげで、書類の確認も格段に便利になりました。自治体などから受け取る文書が、どのようなものかわからないという相談は多いのですが、以前はコンビニからファックスで書類を送ってもらっていました。最近は、スマートフォンで写真を撮って、SNSやメールで送ってもらっています。相談者は簡単に送ることができ、こちらもすぐに確認できます。ネット環境の発達は、相談者への対応だけでなく、関係機関などとのやりとり、特に弁護士との連絡に用いるようにもなりました。忙しい弁護士は電話ではなかなか連絡がつきませんが、メールであれば、確実にやりとりができ、双方にとって事務的にスムーズになっています。
便利さの一方で、メールやSNSでの対応があまりに増えてしまうと、相談体制としても見直しが必要になるかもしれません。面談や電話であれば、時間枠が決まっていて、相談者もそれを承知してもらえますが、メールやSNSは時間を問わないので、対応可能な範囲を超えて相談が寄せられてしまう可能性もあります。また、その独特なコミュニケーションの関係上、対応する内容や範囲は、面談や電話とはまた違ったものになるでしょう。面談や電話以外の相談対応の方法が、情報環境の発展に応じて、今後どのように変化していくのか、私には想像ができませんが、いずれにせよ、状況に応じ柔軟に変化させていく姿勢は重要なのだろうと思います。
(2018年7月号より)
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。