公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第36回 「勝手に離婚」のケースから

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 以前、「勝手にサインされた」というテーマで記事を書きましたが、今回もそれに関連して、「勝手に離婚届を出された」というケースについて書きたいと思います。共通するのが、夫か他の人が離婚届の妻の署名欄に記名し、子どもがいる場合は親権を「父」にして提出しています。離婚届は受理され、離婚が法的に成立し、子どもの親権は父で決定してしまっていました。
 Aさんは、夫の暴力で子どもを連れて逃げ出したところ、そのすぐ後に夫が離婚届を出したことが、別居に伴う様々な手続きの中で判明しました。Aさんの場合、子どもはAさんと一緒に住んでいたのでそのまま子どもとの別居を続けながら離婚無効の主張と併せて、親権者変更の裁判の手続きを行いました。調停が不成立になり、審判となり、一年以上かけてようやく親権者を変更することができました。
 Bさんは夫の暴力で避難したのですが、子どもにある事情があり、子どもは別の保護施設に預けられました。夫はその間に離婚届を出してしまっていました。Bさんがシェルターにいる間、子どもの一時保護期間が終了したのですが、親権者が父で決定していたため、子どもは父親の元に返されました。Bさんはその後、離婚無効と親権者変更の裁判手続きを行いましたが、子どもが「父親のもとで安定して暮らしている」ことを理由に親権者変更は認められませんでした。
 Cさんも夫の暴力が原因で家を出ました。Cさんは、自分に経済力がないこと、子どもに負担をかけたくないという思いから、子どもを夫の元に置いて一人で家を出ました。Cさんの選択は、子どもの幸せを考えてのものでした。Cさんは、自分が経済的に安定できたら、子どもを引き取りたいと思っていましたし、別居の間も、夫の家に行って家事をしたり子どもの世話をしていました。しかし夫が勝手に離婚届を出してしまい、Cさんは夫から子どもに勝手に会うなと言われ、子どもとの関係を断たれました。Cさんも離婚無効と親権者変更の裁判手続きをしましたが、認められませんでした。
 私は多言語相談サービスのほかにも仕事をしているのですが、数多く受けた日本人の離婚に関する相談の中で、「勝手に離婚届を出された」というケースに出会ったことがありません。一方、勝手に離婚届を出された外国人女性の相談は、これ以外にも数ケース受けたことがあります。単純に比較できるものではありませんが、日本人男性配偶者に、相手が日本人でないから、勝手にやってもさほど大した問題ではないという、傲慢さが伺えるような気がしてなりません。
日本の離婚は、離婚届を出せば成立する(協議離婚の場合)ところに、この問題の原因があります。窓口では提出者の本人確認のみなので、夫または妻の一方だけが提出しても受理されてしまいます。このような簡単な手続きですから、偽造は簡単に起こり、その確認のしようがありません。そして、それが偽造であることを証明する裁判に、一年以上かかっています。その間の子どもの状況、発達を考えた場合、この手続きの問題が、子どもの一生を左右し、子どもに深い傷を与えることになっています。外国人母のもう一つの問題は、在留資格を失い、日本にいられなくなる、つまり、二度と子どもに会えなくなることさえ起こりうるのです。このような手続きができるだけ早く改正されることを強く望みます。

(2014年3月号より)

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。