第23回 「保証人」という壁
吉嶋かおり(よしじま かおり)
保証人を探すこと、頼むことが大変だというのは、多くの方が経験されたことがあると思います。これは外国人にとっては、さらに切実な問題としてのしかかっています。
外国籍の人は、日本に来て暮らすために在留資格が必要ですが、この申請には身元保証人が求められています。初めて入国する場合は、学校や会社、配偶者などが身元保証人になります。
離婚後に在留資格の更新をしなければならなくなったものの、頼める人がいなくて、途方に暮れているという相談はよくあります。
身元保証人は資力が求められ、収入証明などを提出しなければなりません。そうすると、友人の外国人は資力がなくて頼むことができず、日本人の知り合いもいなくて、誰もあてがないと困っています。離婚した夫に頼むなんて嫌だと言いますし、DVでの離婚だった場合は、そんなことは絶対に無理だと怖がります。それは当然でしょう。在留資格は、民間の契約ではないので、保証人を求めるというのは奇妙な感じもします。特にDVなどの背景によって保証人を見つけるのが困難な人のためには、何らかの配慮があったらと、相談を受けているとしばしば感じます。結局、誰もいなくて、どうしようもなく、前の夫に頼んだという人が何人もいました。
保証人探しで困るもう一つの問題は、住居です。契約時に保証人が必要ですが、これも在留資格と同様に、頼める人がいなくて、多くの人が困っています。
知り合いに頼めない人のために、保証協会を利用する方法がありますが、これは当然ながら支払いが必要です。協会によっては、外国人に対して、日本人よりも多くの保証料を求める団体もあります。でも、保証人探しで困っていると相談を寄せた外国人はみな、様々な状況の中で、貯金や収入が全くなかったり、生活保護を検討せざるを得ない、経済的に非常に苦しい状況なので、保証協会を利用することも難しいのでした。
それで仕方なく、夫と離婚するにも関わらず、夫に頼んだり、夫の親に頼んだ人がいました。別れた前の夫に頼んだ人もいます。これはまだ引き受けてくれただけましかもしれません。
「苦しい時に藁をもすがる」という言い方がありますが、保証人問題は、まさに藁をもすがる思いで苦労されています。すがる藁さえない人もいて、そういう人は、また別の手立てを考えなければなりません。「保証人」という壁に阻まれ、人生の選択肢が変わってくるのは、日本人よりも外国人が強く影響を受けていると思います。
(2011年12月号より)
吉嶋かおり(よしじま かおり)
外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。