公益財団法人 とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2023年9月 en glad laks (エン グラ ラクス)(第9回)

岩根あずさ(いわねあずさ)

 このコラムを書いている8月上旬、オスロはすっかり夏の終わりを感じる気候です。ニュースでは連日のように、世界各地での猛暑日や熱中症への警戒が叫ばれていて、このまま世界はどうなってしまうんだろうという不安を隠せません。
 2015年に結ばれたパリ協定では2050年時点で、地球の平均気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃以内に抑えようと各国が約束をしましたが、もはやその実現は絶望的とも言われています。海面上昇で海抜の低い島国は沈み、気温上昇による森林火災や干ばつ、食糧危機などへの不安は遠い未来の話ではなくなってきています。文字通り世界規模で起こっているこの変化に対して、私たちは何ができるのでしょうか。もちろん、一人一人ができることからアクションを起こすことも大切です。ですが、それだけではおよそこの変化には対応できないのではないかというのが私の考えです。例えば、エネルギー政策の転換や都市計画によって地球への負担を減らしながら生活ができる社会を実現していくためには、今の社会を変えようとする意思が必要です。
 2011年に福島第一原発事故が発生したとき、有権者でなかった私は心のどこかで「大人たちのせいで…」という気持ちがありました。ところが、ノルウェーでは10代から政治活動をしている若者も少なくなく、そんな若者の姿を見ると大人のせいにして自らが社会の変化を担おうとする意思を放棄していた自分が恥ずかしくなります。
 “大人”になった今、わかったことは社会を変える機会は選挙だけではないし、有権者だけでもないということです。市民として学び続けることができ、連帯することができ、今声を奪われている人も含めた全ての人が声を上げることができるしなやかさこそが、社会を良い方向へ変えていく原動力になると考えています。そして、そんな場を広げていくこと、声を上げる力をつけていくことが、社会を変えようとする意思を現実のものへしていくために必要なのかなと思います。

岩根あずさ(いわねあずさ)

子どもサポート事業(学習支援サンプレイス)でボランティアをしていた岩根あずささんが、2020年7月よりノルウェーで生活されています。日本から遠く離れた地での生活や現地の様子について、あずささんにレポートしていただきます!