公益財団法人とよなか国際交流協会

外国人相談あれこれ

第10回 支援にまつわるいろいろ03

吉嶋かおり(よしじま かおり)

 相談の仕事をしていて何よりうれしいのは、相談者が一歩ずつ自分の道を歩んでいるのを感じることです。それは単に問題が解決したということではなく、相談者が自分の問題を自分なりに受け止め、考え、感じ、自分で決断していくプロセスです。そのような相談者の変化をみていると、尊敬の念のような感動を覚えます。人が持つ生きる力を感じるというのでしょうか、人生というものの奥深さを感じるというのでしょうか、そういう体験は、そうできるものではないだろうと思います。相談者を通してこのような体験ができることを、私は心から有難いと思います。
 長年、ある問題を抱えた相談者がいました。「何とかなるんじゃないか」と思い、ずっと我慢したり、努力していたそうですが、何も変わりませんでした。そしてある時、人生の一大決心をしました。決心にはたくさんの迷いと不安があっただろうと思います。でも決心した彼女は凛としていました。問題は困難でしたが、あきらめず、彼女は一つずつ進んで行きました。
 問題が一段落したとき、彼女(Aさん)がやってきました。そしてこんな話をしました。

A「どうしてこんなことになったのかな。どうしてか知りたいって思う。」
私「どうしてだろうね…。どんなふうに考えた?」
A「間違った道に行ってたのに、間違っているってわからなくて、進んでしまっていた。だから苦しかったんだと思う。」
私「そういうふうに言ってた人、いたよ。」
A「そうなんだ!じゃあ、私の言ったことは当たってるかな。でもどうして間違った道に行ってしまうのかな。どうしてわからなかったかな。」
私「そうだね、どうしてかなぁ。どう思う?」
A「わからないなぁ。」
私「自分にとって大切なことがわからないと間違ってるかどうかもわからないんじゃないかな。」
A「そうか。」
私「あなたにとって大切なことって何だった?」
A「わかった。私は自分のことを知らなかった。」
私「今はどう?」
A「今は知ってる。私は自分のことをわかってる。」

 Aさんの最後の言葉。これは、自信であり、安心であり、誇りでもあるでしょう。Aさんのこの言葉を聞いて、私は素晴らしいな、と思いました。仕事冥利に尽きるというものです!

吉嶋かおり(よしじま かおり)

外国人のための多言語相談サービス相談員。臨床心理士。2006年から担当しています。
どんな相談があるの?相談って何してるの?という声にお応えできるよう、わかりやすくお伝えできればと思ってコラムを書いています。