公益財団法人とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2021年4月 少しだけ北の国から@福島

辻明典(つじあきのり)

少しだけ北の国から@福島(第23回)

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から、10年の歳月が去ってしまいました。「10年」の響きに引きずられてなのか、〈節目〉を意識した雰囲気に包まれてしまった気がしています。
 今年の3月11日の14時46分も、多くの方々が黙祷を捧げたことでしょう。でも、歳月はまた流れ続け、〈節目〉がなければ震災を想起することが困難になる日が、くるのかもしれません。
 しかし〈節目〉が、過去と現在の間に線を引かせ、〈区切り〉や〈けじめ〉をつけるようにと、私たちに迫ることもあるでしょう。もちろん、これを機に人生を前に進めようとする人も、きっといるはずです。その一方で、魂の深くに刻まれた記憶を、「忘れられない」と感じている人たちがいることを、私たちはよく知っています。2021年2月13日、福島県沖の地震で、10年前の震災の記憶が、ぽっと吹き出した人たちがいたように。
 大きな地震があると、津波はもちろんですが、「果たして、原子力発電所で事故はなかったのか?」という不安が、頭をよぎります。やはり私も、簡単に忘れることはできないのだと、改めて思い知らされた経験です。

辻明典(つじあきのり)

協会事業(哲学カフェ、プロジェクト“さんかふぇ”等)に参加していた辻明典さんが、2013年度より故郷である福島県南相馬市に戻り、教員をしています。辻さんからの福島からの便りをどうぞ。