2022年5月 en glad laks (エン グラ ラクス)(第5回)
岩根あずさ(いわねあずさ)
世界経済フォーラムなどが発表するジェンダー・ギャップ・レポートなどでノルウェーを含めた北欧諸国は毎年、ジェンダーギャップが少ない(=ジェンダー平等により近い)社会であることが示されています。これは数値として表れているだけでなく、日々の生活の中でもジェンダー平等が促進されていると感じる側面がたくさんあります。今回はその一部をご紹介します。
私が、ノルウェー社会におけるジェンダー平等をより強く実感したのは昨年の選挙の際でした。ノルウェーでは昨年の選挙で政権交代が起こり、2021年10月に新たな内閣が発足しました。新内閣は男性が9人、女性が10人で、これだけでも日本の内閣とは比べ物にならないくらい女性の比率が高いことがわかります。また、法務・公安大臣は1993年生まれのまだ20代の女性が務めており、さまざまな年代の声が政治に反映されているのかなと感じました。
前政権は保守政党が務めていましたが、内閣の男女比はほぼ半々でしたし、首相は女性が務めていました。政党の保守派、革新派とは関わりなく、政治の意思決定の場で女性の発言のチャンスが多いことが日本社会とは大きく異なるなと感じました。
また、育児休暇の取得などをはじめとする制度からも、男性と女性の間でのケアワークや家事労働の分担がより平等になされるように促されていると感じます。例えば、男女のカップルが12ヶ月の育児休暇を取る場合、男性と女性それぞれが最低でも4ヶ月ずつ育児休暇を取ることが定められています。私の知人で4ヶ月の育児休暇をとった男性の話を聞いてみました。彼自身、男性が育児をすることを良しとしない文化の中で育ってきた中で、育児休暇取得前は育児を担うことへの意識が低かったそうです。しかし、育児休暇を通じて、今ではパートナーと共に育児の責任を担う意識が根付き、育児休暇が子育てに対しての責任や意識を作っていく重要な機会になったと言っていました。
とはいえ、ノルウェーにおいてもジェンダー平等が完全に実現されているわけではありません。ジェンダーによる賃金の格差やそれに関連して最低金額の年金しかもらえない女性の割合が男性と比較して高いこと、大企業における女性CEOの割合の低さなどが指摘されています。そのため、完全なジェンダー平等に向けて、まだまだ課題も多いのが現実です。また、無償のケアワークや家事労働に関しては、多くの国や地域で女性の負担が大きい状態が続いており、ノルウェーでもこの部分に関して完全な平等が実現できていないという報告もあります。そういった中でも、仕組みを整えることで、ジェンダー平等が社会の「あたりまえ」になっていく、制度作りの重要性が見えたような気がしました。
岩根あずさ(いわねあずさ)
子どもサポート事業(学習支援サンプレイス)でボランティアをしていた岩根あずささんが、2020年7月よりノルウェーで生活されています。日本から遠く離れた地での生活や現地の様子について、あずささんにレポートしていただきます!