2023年7月 이모저모通信(第15回)
皇甫康子(ふぁんぼかんじゃ)
5月の初め、4年ぶりに韓国から親戚たちが日本にやってきた。高齢の父に会いたいという願いはコロナ禍のせいで断念せざるを得ない状況だった。狭い部屋に雑魚寝をし、夜遅くまであれやこれやと話しが弾む。まるで修学旅行のようだとはしゃいでいた。キムチや食材も持ってきて、従妹たちが家庭料理をふるまってくれる。チャプチェ、プルコギ、作り立てのキムパップは最高においしい。私が大好きな韓国のお餅もあり、久々にみんなで食卓を囲むという幸せを味わった。お互いの近況を話したあと、父の妹である80代の叔母が女だというだけで学校に行かせてもらえなかった。好きな人とも結婚できなかったと嘆く。親が決めた夫に先立たれ、幼い子ども4人を育てた苦労話は何度聴いても胸が痛む。女だからと諦めないで、大学進学を果たした従妹たちの努力もすごい。話の中に何度も出てくるのが、日本から仕送りをし続けた父への感謝の言葉だ。貧しかった韓国で、父の支援がなければ今の自分たちはいないと言ってくれる。
そんな親戚たちだが、保守的な地域なので、政治的な話は意見が合わない。文在寅前大統領は口先ばかりで、支援のバラマキをして若い世代への負担を重くし、就職も難しい。「北」の言いなりになって自国の軍隊を激励することもなかった、と言う。従妹の夫は苦学して職業軍人になった人だ。とりわけ、従妹たちの怒りを買ったのは、日韓関係の悪化だった。反日の機運が高まり、日本にいる親戚の話ができなくなったという。過去の清算をしてこなかった日本が悪いとは思うが、経済的にも政治的にも日本とは仲良くしないと本当に困るというのだ。
「在日」の私の味方になってくれるのは保守的な考えを持った人ではなかった。韓国も同じで、友人たちは進歩的な人ばかり。私が聴く話とは真逆な話なのだが、納得できる意見もある。日本と韓国の関係が悪くなると、すぐに影響を受けるのが私たち「在日」だ。2019年、大阪での同胞との交流会で「在日」の苦労に報いたいという文大統領の言葉を信じていたのだが、どんどん関係悪化が進んでしまった。先の大統領選はどちらの候補も支持できず、選ぶのが困難だったと従妹たちは嘆く。それでも、現政権の外交手腕に期待したいという。それぞれの立場から政治を見ると支持する対象が異なるのは当然のことだが、多数者や力を持った人たちの意見ばかり聞くような政権では、安心して暮らすことはできない。我慢を強いるならきちんとした説明や将来への希望を提示するべきだと思う。
言いたいことを言いあい、互いを思いやり、ますます従妹たちとの関係は深まった。次の再会を約束して、3泊4日の合宿生活を終えた。
皇甫康子(ふぁんぼかんじゃ)
2018年2月号に最終回を迎えた連載「なんじゃ・カンジャ・言わせてもらえば」の執筆者、皇甫康子さんの新しいコラムがスタートします。皇甫さんの想いとメッセージがイモヂョモ(あれこれ)詰まったコラムをどうぞ。