公益財団法人とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2018年01月 少しだけ北の国から@福島~峠のあじさいと放射能 ~

辻明典(つじあきのり)

飯館村をドライブしていた、6月のある日のことでした。ふと窓から景色を見ると、あじさいが咲いていたので、ついつい車を停めて、そのたたずまいに見入ってしまいました。
 これは、帰還困難区域に指定された、長泥地区へと続く峠です。この道の先は、バリケードによって隔てられています。放射線量の値がとても高いので、一般の人の立ち入りは制限されているのです。その長泥へと続く道の端に、あじさいが植えられていました。きっと飯舘村のどなたかが、この道を通る人たちが、寂しい思いをするかもしれないので、せめて愛でてはくれないかと、花を育てているのでしょう。
 ここで暮らすことは難しいかもしれない。でも、花の美しさは、ここに住まうことはできるだろう、と。放射能と、花の美しさが共存しているのが、この村の風景なのでしょうか。

辻明典(つじあきのり)

協会事業(哲学カフェ、プロジェクト“さんかふぇ”等)に参加していた辻明典さんが、2013年度より故郷である福島県南相馬市に戻り、教員をしています。辻さんからの福島からの便りをどうぞ。