公益財団法人 とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2024年1月 en glad laks (エン グラ ラクス)(第10回)

岩根あずさ(いわねあずさ)

 今年もノルウェーに痛いくらいに寒い季節がやってきました。
 今週のオスロの気温は最高気温がマイナス5℃くらい、最低気温はマイナス12℃くらいです。寒い寒いと文句ばっかり言いたくなってしまいますが、寒いのも悪いことばかりではありません。気温がマイナス10℃を下回る日には、ダイヤモンドダストという現象が見られることがあります。空気中の水蒸気が凍ったところに日光が当たって、空気がキラキラと光るように見えるのです。初めて見た時は、「なんだか今日は天気も良くて気分がいいから世界がキラキラしているのかな?」と思っていたられっきとした自然現象でした。
 もう一つ、寒い冬に楽しみなことにオーロラがあります。オーロラ自体は夏も出ているのですが、肉眼で見るには空が暗い必要があり、夜が長い冬はオーロラが見れるチャンスも増えるのです。とはいえ、オスロでオーロラが見られるチャンスは一冬にそう多くはありません。そしてそのほとんどが民家や街灯などの光にかき消されてしまうので、オーロラ予報が出たら大急ぎで民家の少ないエリアに行かなければならず、これまでチャンスを逃してきていました。先日オスロで強い光を放つオーロラが出現し、ようやく家の近くで肉眼でも見えるくらいのオーロラを観測することができました。一見すると、どこかの家の煙突の煙のように見えるモヤを目を凝らして根気よく見続けていると、ゆらゆら揺れるモヤの中に色がついていることがわかり、これが?と拍子抜けしたような、幻想的なような不思議な光でした。
 スカンジナヴィアの先住民族、サーミの言葉でオーロラは「聞こえる光」「狐の炎」などの呼び方があり、オーロラにまつわる民話も多く存在するそうです。彼らの生活圏はオスロよりもずっと北にあるので、オーロラの出現もきっともっと日常に近いところにあるのかもしれません。スマホのアプリでオーロラ出現予報を見て、慌てて外に出た私は、気をつけていなければ見逃してしまうくらいのオーロラの光を見つけようと目を皿にしながら、この光に名前が付いていなかったらこんなに一生懸命探さなかったのかもしれないとも考えていました。名前があることで現象が切り取られて認識できるようになるのは、オーロラだけではないのかもしれないと、不思議な色の光を見ながらそんなことを考えました。

岩根あずさ(いわねあずさ)

子どもサポート事業(学習支援サンプレイス)でボランティアをしていた岩根あずささんが、2020年7月よりノルウェーで生活されています。日本から遠く離れた地での生活や現地の様子について、あずささんにレポートしていただきます!