公益財団法人 とよなか国際交流協会

リレーコラム(2015年度~)

2024年3月 이모저모通信(第17回)

皇甫康子(ふぁんぼかんじゃ)

 劇団トル、キムキガンさん演じるひとり芝居「はらぺこ男の5度目の選択」の釜山公演を応援するため、4年ぶりに韓国を訪問した。
 李フンセビさんは九州の炭鉱に強制連行され、命がけの逃走後、分断祖国に帰還することなく池田市に住み、2014年86歳で他界された。1987年に出版された「アボヂがこえた海~在日朝鮮人一世の証言」を基に李さんの証言を演劇にし、若い世代に届けたいという強い思いがひとり芝居になり、釜山公演が実現した。50人ほどで満席になる小劇場での韓国語の演技は昨年(2013年)7月の池田の公演とはまた違った味わいがあった。キガンさんの観客と対話する演技にとても盛り上がる釜山の人たち。知人の感想を聞くと、強制連行の話を身内から聞くこともなくなり、教科書に載っている受験の知識としてしか知らなかったので新鮮だった。もっと暗い話かと思っていたが笑いもあり、とても人間的な舞台だった。と言ってくれた。釜山は強制連行された人が船に乗せられ日本などに連行された地だ。国立日帝強制動員歴史館では、その実態を体験的に知ることができる。朝鮮を手にいれるために日本が1929年に設立した東洋拓殖株式会社の建物も釜山近現代歴史館になっている。今回は知人の案内で、元は日本軍が競馬場をつくり、解放後は米軍が使用していた釜山市民公園の展示を見ることができた。また、盧武鉉元大統領の生家や居住していた家、記念館などがある村にも行くことができた。熱心な市民たちの説明を受け、記念館に残された名言に感服した。やはり、すごい人だったのだと見識を新たにした。
 大ヒット、ロングランとなっている映画「ソウルの春」は若い人たちがたくさん観に来ていて驚いた。金大中生誕100年ということで、制作されたドキュメンタリー映画、「道の上の金大中」は彼の生い立ちと大統領候補になるまでの軌跡が貴重な映像やインタビューで構成され、見応えがあった。はじめて知ったこともたくさんあった。何度も死線を超え、光州民衆抗争のあと、大統領候補として熱烈な歓迎をうけ、市民の前に立つ姿。一人の政治家に生死を賭け、未来を託す人たちの道を埋め尽くす強い思いが韓国の民主化を実現した。映画館の中は感動の涙、涙だった。
 李さんをはじめ、自由を求める人たちの生き方に触れた、貴重な時間になった。勇気と力が湧き上がる。

皇甫康子(ふぁんぼかんじゃ)

2018年2月号に最終回を迎えた連載「なんじゃ・カンジャ・言わせてもらえば」の執筆者、皇甫康子さんの新しいコラムがスタートします。皇甫さんの想いとメッセージがイモヂョモ(あれこれ)詰まったコラムをどうぞ。